雪に消えたクリスマス
麗は、視線を真っ直ぐと俺に向け、俺の話に聞き入っている。
 その視線には、どこか疑りにも似た感覚がしたのは、俺の、単なる気のせいだろうか?
「誰にも黙って?」
 麗のその言葉は、俺の胸を深く突き刺さる。
「悪いとは…思ってるよ………ただ、どうしてもな…ホラ、思い立ったが吉日ってやつで…突然だったから…」
 俺は苦しい言い訳をする。実際、突然だったのは確かだ。
 きっと、俺個人の力ではどうしようもなかった。
「ま、でも安心したぜ。二年振りに帰って来て、この街が全然変わってたらどうしようかと思ったからな………本当に、変わらないな、ここは…」
 俺はそう言って、麗の視線から逃れ、窓の外の景色に目をやる。
「本当に………本当に、変わってないと思うの?」
 そう言った麗の声は、なんだかひどく寂しそうで、俺はなんだか怖かった。
「………麗?」
 黙り込んでしまった麗に、声をかけると、麗は肩をビクッっと震わし、驚いたように俺の顔を見る。
 きっと、何か物思いにふけっていたのだろう。
 昔から、麗は何かを考えている時に声をかけられたりすると、この仕草をする。
「ところで、創真はいつ、旅立ったの?」
 俺は思わず眉をひそめた。
「だから、二年前だって」
「何月何日?」
「…………」
 麗の質問に、俺は答える事ができなかった。
 
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