雪に消えたクリスマス
心配になって探してみると、さびた自転車の山の中に、一カ所だけ、銀色のカバーが被せられている場所がある。
 俺は、急いで、山と積まれた自転車を退け、銀色のカバーを取り払う。
 そこに、俺の愛車が眠っていた。
 青い、250㏄のオフロード・バイク。
 カバーが被せてあったせいか、保存状態は、思ったより悪くない。
 少し埃っぽかったが、それも払えばなんとかなる。
 俺は、愛車を広い場所まで運ぶと、今日までたまっていた埃は、ハンカチで綺麗に拭ってやった。
 後は、エンジンがかかるかどうか…。
 普通のバイクと違い、オフロードのバイクには、キックがついている。
 分かり易く言うと、一般的なバイクは、エンジンをかけるためのスターター・ボタンがついていて、そのボタンを押すことでセルが回り、エンジンがかかるわけだが、これだとバッテリーがあがってしまうと、ガソリンの有無に関わらず、セルが回らないので、絶対にエンジンはかからない。
 しかし、キック・スターターは、エンジンを直接回す方法なので、例えバッテリーがあがっていたとしても、エンジンがかかる確立が高いのだ。
 最近のバイクでは、車と同じように、フューエル・エンジクションのモノも出回っているようだが、それは1000㏄を越えるような大型車に限られる。
 しかも、このようなキック・スターターは、原付を除いて、ほぼオプションなので、つけているバイクは珍しいと言える。
 ま、もう少し分かり易く、人間に例えて言うと、止まった心臓に人工マッサージをするようなものだと考えていくれればいい…。
 …ん?余計わかりにくくしているかな?
 そんな事を一人で考え、俺は愛車のキック・スターターで、エンジンをかけてみる。
 
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