雪に消えたクリスマス
「どうしたんだウララ?電話、鳴ってるぞ?」
 俺が促すと、ウララは、渋々といった様子で携帯電話に出た。
「………もしもし」
 ウララが、誰と話しているかは分からなかった。
 しかし、ウララの表情は険しい。
「…うん。また、こっちから連絡するから…え?今、人と会ってるから…うん、うん、じゃぁね…」
 ウララは、電話をとって二、三分もしない内に、電話を切る。
「…誰からだったの?…友達…?急いで切る事なかったのに…」
 俺がそう言うと、ウララは曖昧な笑顔だけを俺に向けて、携帯電話の電源を切って、そのままバックの中にしまった…。
 食事が終わり、その日もまた、別々の家と帰って行く…。
「ウララ…明日も、会えないかな…?」
 帰り際、俺はウララを呼び止めた。  
「明日…?明日は………ごめん…」
 車に乗り込もうとしていたウララは、俺の方を振り返ると、ちょっと切ない笑顔で、悲しく微笑んだ。
「いや、ウララにも色々とやることがあるだろうし…いいよ…無理言ってごめんな…」
 俺も小さく微笑み返し、「じゃぁ」と、右手を挙げる。
 俺は、いつものように、彼女の車のテール・ランプの灯りが見えなくなるまで、ずっと、去って行くウララの車を見つめていた…。
 12月19日。
 次の日、俺は落ち着かなかった。
 昨日、ウララにかかってきた携帯電話の相手が気になってしかたがないのだ。
 
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