雪に消えたクリスマス
 封筒の糊付けが甘かったのか、それとも、もともと糊などつけていなかったのか?それは分からない。
 しかし、とにかく手紙の中身は、宙を舞って俺の目に曝される事になってしまったのだ。
 俺は、人間として、最低の事をしようとしているのかもしれない…。
 けれど、俺は弱い人間だ。
 目の前に横たわる秘密を見過ごさずにはいられなかった。
 俺は、緊張しながら、手紙の中身を開ける。
 中には、あまり綺麗とは言い難かったが、力強い字で、「ウララへ…」と、宛名書きがしてあった。
『ウララへ
 ウララと最後に会ったのは一年と半年くらい前だったかな?
 あの時、ウララは悩んでたよね?…創真君が失踪しちゃって、辛い日々を送っていたから…でも、ウララの悩みは、それだけじゃなかった…。
丁度その時だったかしら?創真君に、実は顔も知らない兄弟がいるって話をあなたから聞かされたのは…。
 名前は…そう、春日部 玲。
 玲ってのは、当て字なんですってね?
 その話を聞いた時、私ピーンときたわ…。
 ウララ、その人に恋してるって…。
 あれから、その彼とどうなったのか知らないけれど、連絡がないって事は…。
 
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