雪に消えたクリスマス
 次は、もう少し大きな声で呼びかけてみよう…。
「あの、すみません!」
 先ほどよりはいくらか大きな声で呼びかけてみたが、女従業員が気づいた素振りはなかった。
 なんで無視するんだ?
 俺は、いい加減頭にきた。
「ちょっと!さっきから呼んでるだろ?聞こえないのか?」
 俺がついに本気で叫ぶと、女従業員はびっくりたように、体をビクッと震わせて驚いた顔をした。 
「あ、失礼いたしました。いらっしゃいませ…えぇと、ご用件は何でしょうか?」
 女従業員は、今初めて俺の事に気がついたかのような対応をしたが、それが演技なのか、それとも本当に今気がついたのかは俺には判断できなかったが、少なくても、俺の気分が著しく害されたのは確かだ。
「ウララ…水浪 麗さん、いますか?急用なんですが…」
 俺がそう言うと、その女従業員は少し困ったような顔をし、俺にこう告げた。
「あいにくですが、水浪は午前中で早退いたしましたが…」

 ………二時間後。
 俺は街を彷徨っていた…。
 別に宛があるわけではない。
 只、そうせずにはいられない気分だったのだ。
 何かの歌の歌詞のように、街を彷徨っていたら偶然ウララに出会うのではないだろうか?
 俺は、そんな甘い事を考えたわけだが、実際にはそんなに都合良く事は運ばず、俺は途方に暮れていた。
 狭いと思っていた世間も、何かを探している時にはとてつもなく広く思える。
 偶然を重ねれば、それは運命になる…どこかで聞いたようなセリフだが、偶然というのも待っていては中々来ない…。
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