雪に消えたクリスマス
俺の視線の向こうに、ウララがいた。
 ウララは、ステンドグラスがはめ込んである窓辺の席に、一人で座っていた。
 少々大人の顔つきになったといっても、やはりまだ、あどけない感じが残るウララは、ステンドグラスから入ってくるわずかな光と戯れている。
 そんな子供っぽい仕草は、全然変わっていないウララ…。
 俺は、そんなウララを見ていたら、なんだかこのまま黙ってウララの行動を監視しているのがひどく悪い事をしているような気分になってきた。
 初めこそ、ウララの事を疑いもした…あの生真面目なウララが仕事を早退するというのだから、よっぽど何かあったのだと思ったからだ。
 しかも、早退する事は、俺に内緒だったのだから、俺に言えない用事なのだと、俺が勘違いしてもおかしくはない。
 しかし、よく考えれば、いくら真面目と言っても、ウララも人間、息を抜きたい時もあるだろうし、それに、優しいウララを、あの気の強い葉子が無理矢理誘ったという事も考えられる…ともかく、ウララの用事は済んでいるようだし、俺が声をかけてもなんら差し支えはないだろう。
 俺は、そう一人で納得をして、やっとウララの前に姿を現す決心をした。
 俺はゆっくりとした足取りで、音を立てないようにウララに近づく…。
 ウララは、そんな俺の様子に気づいた様子もなく、相変わらずステンドグラスからの光を手の平に当てたりしながら遊んでいた。
「う~らら♪」
「きゃっ!」
 俺の突然の呼びかけに、ウララは思わず声を上げた。
 作戦、成功。
 俺は小さな満足感を覚え、思わずニッコリとする。
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