雪に消えたクリスマス
「…僕と麗ちゃんとの関係ですかぁ………簡単に言えば、麗ちゃんは、僕のたった一人の肉親の恋人で、僕は君のお兄さんだった…。創真君の失踪後、君が話した僕という存在を麗ちゃんは思い出して、僕にコンタクトをとってきた…もしかしたら創真君の居場所がわかるのではないかという期待を抱いて…しかし、実際は手がかりは掴めず、僕と麗ちゃんは協力して君の捜索に当たった…それ以来、麗ちゃんは、時々僕に相談事とかをするようになった…ってところですかね?」 
 そう言うと、玲はまたニッコリと俺に微笑みかけてくる。
 こういうのを、邪気のない笑顔とでも言うのだろうか?
 悔しいが、玲にこの笑顔をされると、なんだか不思議と心地よい気分になってくる。
 自分が、葉子の手紙一枚で疑心暗鬼になった事が、ひどく恥ずかしく思う。 
 きっと、玲の言葉に、嘘はない。
 これは直感だが、おそらく間違っていないだろう…。
 俺と玲は、その後しばらくとりとめのない話を続けた。
 話してみると、俺と玲との共通点の多い所に気づかされる。
 玲は、俺と顔ばかりか、思考パターンや趣味も似ているのだ。
 玲は物書きのような仕事をしているという…それだけではなく、洋服や宝石、果ては宣伝広告のデザインなどを作成していて、正にマルチな職業をしている。
 それは、俺がやりたかった事全てだった。
 俺がそうしたかった。
 玲は、その全てを持っている、未来の俺…。
 しかし、実際は………。
 玲は、ずっと笑顔を絶やさず、俺に話しかけてくる。
 その一言一言が、耳に心地よく、また興味が沸く内容だった。
 玲の話を聞いているだけで、俺は玲がどのような人生観を持ち、どのようにして生きてきたのかが、不思議と分かるような気がした。
 それは、やはり俺と思考回路が似ているせいなのか、不意に玲とは昔から知っているような、そんな感覚までしてくるから不思議だ。
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