雪に消えたクリスマス
「…はい?」
 その音は、玲の携帯からだった。
 玲は、すかさず携帯電話に出ると、少し難しい顔をしながら電話の相手と話しをしている。
 小さな声で話していたので、どういう用件なのかは分からなかったが、どうも仕事の話らしい。
 俺は、話し相手を失い、ふとウララの方に目を向けると、そこには心配そうな顔つきで玲を見ているウララの姿があった。
「…それじゃ、そういう事で…」
 玲は、俺達を気にしてか、手短に電話を切ると、少し困った顔をして俺達の方を見た。
「………玲?」
 ウララは、心配そうな表情で玲の顔を伺う。
「…ごめん、麗。ちょっとトラブルが発生したらしい…」
 玲は険しい表情を見せながらも、ウララの事を気遣っているようだ。
 本当なら、飛んででも仕事に戻りたいだろうに、ウララを放ってはおけないという様子。
「私の事はいいから…行ってあげて」
 一方、ウララの方も、玲に気をつかっている。
 それは、さながら愛し合う恋人同士が別れを惜しんでいるシーンそのものだった。
 ウララの言葉を受けて、玲は少し躊躇いながら、「ごめん」と一言だけ言って席を立つと、そのまま店の外へと出ていった…。
 玲の姿が見えなくなると、ウララは小さなため息をついて、「私達も出ましょう」と俺を促す。
 
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