雪に消えたクリスマス
 精算は、玲が先に済ませてしまったので、俺達はレジの横を素通りして店の外に出る。
 店の外に出ると、辺りはもう暗くなっていた。
 俺とウララは、白い息を吐きながら、陽の沈んだ後の、人通りの少ない寂しい公園脇の小道の中を歩く。
 街のイルミネーションが綺麗に光り始め、
時々家路を急ぐ人々とすれ違う。
 ウララは、少し俯いたまま、黙って俺の隣りを歩いていた。
「あれは、いったいどういう事なんだ?」  俺は、先ほどまで会っていた玲の行動を思い出して、わざと大きめの声をあげた。
 わざと大きな声をあげたのは、ずっと黙りを決め込んでいるウララの注意を、少しでも俺に向けるためだ。
「アイツは、ウララの相談を聞くためにあそこに来たんだろ?だったらウララの相談をちゃんと聞くまでは仕事なんて後回しにするのが普通だろ?俺だったら、何を置いてもウララ優先にするんだけどな!」
 玲は、確かに良いヤツっぽかったが、俺は目の前の知人をほっとくような行動は好きになれない。
 特に、俺のウララに対しては、その想いは相当のモノだと自負している。
 ウララへの愛情に関しては、いくら似ている兄弟と言っても、違うらしい…。
 もっとも、それは当たり前なのだが…。
「玲には、仕事の途中に抜けて来てもらったから…しかたないのよ。創真とは違うのよ…」 俺はウララの言葉に耳を疑った。
 ウララは、当然俺の意見に賛同してくれるものだとばかり思っていたのに、それを否定するかのようなウララの言葉。
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