雪に消えたクリスマス
「…ウララは、アイツの味方をするのか?」
 自分の想いを裏切られたと感じた俺は、ウララにくってかかる。
「そういうわけじゃないけど…その、責任感の問題よ…責任を持って仕事をするのって、とっても大変な事なのよ。私は、玲の行動が正しいって納得できるわ…」
 ウララは、俺を諭すかのような口調で、俺に言い聞かせるが、俺にはそれが気に入らなかった。
「責任感?何を置いてもウララの方が大事だというのは責任感がないっていうのか?だいたいなんだよ!さっきから玲、玲って!ウララだけじゃない、アイツもウララの事『麗』って呼び捨てにしてたよな?あれはいったいなんなんだ?アイツは単なる相談相手なんだろ?」
 俺はカッとなって、つい声が大きくなる。
 二年前のウララなら、今頃泣き出しているところだ。
「そ、そんな…そんな事どうだっていいじゃない=創真こそなによ?何を置いても側にいるって言ったって、現に私の前から姿を消してたじゃない!突然現れて勝手な事ばかり言わないでよ!」
 ウララの目に、うっすらと涙がたまっていた。
 ウララのその態度が、ウララにとって、玲が単なる相談相手というだけの存在ではない事が俺には理解できた。
「ウララ…まさか………」
 ウララにとって、玲は単なる相談相手ではない、それ以上の存在なのだ。
 そう考えれば、ウララが玲を呼び捨てにするわけも、玲がウララを『麗』と呼ぶわけも簡単に説明がつく。
 いや、そう考えた方がよっぽど自然な事だ。
 葉子の手紙、ウララが俺に内緒で半休をとってまで会っていた事…ウララの態度…。
 俺はどこかでそれに気づいていた。
 だが、必死に気づきたくないと思っていたのだ。
 どんなに変わって行くこの街の中でも、たった一つ、変わらないモノがあるとしたら、それはウララだ…そう思いたかったから…。
 しかし、実際は、二年という月日は確かに流れている。
 それは、この街にも、ウララにも…。 
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