雪に消えたクリスマス
 二年前で時が止まったままなのは、この俺だけだ…。
 この街に戻ってくると決心した時、そんな事は覚悟していたつもりだった。
 二年間…二年間も連絡がなかったのだ…でも、どこかで、そうではない事を信じたかった。
「…そうよ。私は玲の事が好きなの。玲も私に好意を持ってくれてるわ!それはいけない事なの?」
 俺は、ウララの言葉に愕然とした。
 それは、俺がウララの口から一番聞きたくない事実だった。
「…なんでだよ…?だってアイツは…なんでアイツなんだ?アイツは俺と顔も声も趣味も一緒で………アイツは、俺の代わりなんだろ?ウララは、俺のいなかった二年間が寂しくて、アイツに俺を重ねてた…それだけだよな…?」
 俺は、そうだと、ウララに言って欲しかった。
 同じDNAを持つ俺の兄弟に、ウララは俺を重ねていただけだ。
 それは、玲本人を好きなのではない…玲を透かして見た俺が好きなんだと、思いたかった。
 しかし、俺の願いとは裏腹に、ウララは小さく首を横に振った。
「…確かに、初めて玲を見た時は、創真かと思ったわ…だからこそ玲と接する事ができた…それは認める………」
 ウララのその言葉は、俺に一縷の光を射してくれたモノに思えた。
 ………しかし。
「でも、違うの!玲は玲で、創真は創真なのよ…私にはそれがすぐに分かった…私は創真を本当に愛していたんだもん…。初めて玲に会ったのは、創真を探す手がかりを探すためだった…でも、玲に惹かれていく自分に気づいて…」
 ウララの目からは、大粒の涙が溢れ出していた。
 それでも、ウララは泣きながら俺に訴えていた。
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