雪に消えたクリスマス

「それで?創真君には…その事を言ってしまったんですか?」
 電話の向こうからは、麗をいたわるような口調で話す玲の声が流れていた。
「………うん」
「彼は………なんて?」
 その質問には、すぐに答える事ができなかった。
 麗自身、それが現実の事であるのか、よく理解できていなかったからだ。
「うん………なんか、ひどく驚いた顔して………そして………」
「そして?」
 麗は、誰もいない空間を見つめる。
「アハッ。そしたら、創真、消えちゃった…突然、パァッって、消えちゃったよ………」
 そこまで言うと、麗の目からは、涙が溢れ出ていた。
「ねぇ、また創真はいなくなちゃったの?もう会えないの?私のせいなの?また、私は一人なの…………?」
 麗の目からこぼれ落ちる涙は、いくら止めようと努力しても、堰を切った川のように後から後からこぼれ落ちてくる。
 そんな麗に、玲はつとめて優しい口調で言った。
「麗…彼とはまた会えますよ。僕にはわかるんです。彼が消えてしまったのは、麗のせいじゃない…………。彼は忘れ物を取りにいったんですよ…」
「………忘れ物?」
「そう…心の忘れ物をね………。結局、彼自身が気付くしかないんですよ。それに………麗、君はもう、一人ぼっちじゃない…そうでしょ?」
 玲の優しい口調に、麗の涙はいくらかその勢いを弱めた。
「………うん」
 そして、麗はもう一度だけ、消えてしまった創真がいた場所を見つめた。

 
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