色えんぴつ

初めて流した、女の血。
目の前にいる男は、自分がどんなに残酷なことをしたのか気付きもしない。


「じゃあ俺、そろそろ行かなきゃ」
「…」

カチャ、と小さな金属音が鳴り、ドアが開く。
「またね、莉奈ちゃん」

先輩は振り向きもせず、出ていった。




いつもより鮮やかな橙色の陽射しを浴びる背中が、妙に痛い。

「…ほんと、運ないな」


そぅつぶやくしか、莉奈はできなかった。
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