セピア
 今、花梨は在(あ)りえない場所にいて一度も会った事もない女性に会っている……。
 多分これは夢?夢ならばそのうち醒(さ)めるだろう。が、しかし次第に花梨の心の奥底に眠っていた好奇心がムクムクと目覚めてきて、花梨はこの後の展開が気になり始めてきた。なので暫(しばら)くはこのまま静かに時が流れてくれれば良いなとさえ思った。この気持ちはなんだか大好きな小説を読んでいる時に 早く結末を知りたいと思う気持ちに似ているなとも花梨は秘かに思った。

 そして同時に花梨はこのまま李と過ごし、曾おじいちゃんの奥さんである曾おばあちゃんの李がどう言う女性だったのかを知るのも悪くはないかなとも思い始めていた。

「さあとにかく家の中に入って!このお話の続きは家の中でゆっくりとする事にしましょう」
 と李にそう言われて花梨はひとまず李と共に家の中に入った。

 招き入れられた部屋の中は花梨がいつしか図書館で見た大正時代の写真集の名残が色濃く残っている時代の昭和初期そのもののたたずまいをしていた。
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