セピア
「さあ花梨ちゃん丁度食べ頃になったからお召し上がりなさいな」
 と李が言ったので早速花梨はそのアツアツのキリタンポを食べる事にした。

「そうね。腹が減っては戦(いくさ)が出来ぬ。まずは腹ごしらえだわ。わあー本当に美味しそう!ではいただきます」
 と言って花梨はキリタンポをよそって貰った器を李から受け取ると美味しそうに食べ始めた。

 キリタンポ鍋は割と簡単で手間要らずなので倉橋家では冬場に作る夕食のメニューの一つとして頻繁に登場する、言わば共働きで忙しい花梨の母、有莉禾にとって最も得意とする十八番(おはこ)的な料理だった。

 でもこのところ残業続きで帰りが遅かった花梨は夕食を家族と一緒に摂(と)る時間がなかったので、こうして本格的なキリタンポ鍋を食べるのは本当に久し振りだった。なので思わず懐かしさがこみ上げてきた。なるほど流石(さすが)は親子だな。李の味付けは母の有莉禾ととても良く似ている。と思いながら花梨はキリタンポをセッセと口の中へと運んだ。
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