セピア
 李は色々と着物の着付けをてきぱきと手伝ってくれた。流石(さすが)にこの時代に生きた女性である。
着物が主流で生活をしてきた分だけ着物を着ると言う習慣が身に付いているのだろう。

髪も結ってくれて、そして着物の柄とお揃いの椿の花の簪(かんざし)も挿(さし)てくれた。

「ほら花梨ちゃん見てごらんなさい」
 と李が言って花梨の肩に軽く両手を置くと、花梨は姿身の前に立たされた。

「良く似合っているわ。とってもステキよ」
 と李が花梨の後ろでちょこんと顔を横にして笑顔で言った。

「馬子にも衣装ね!」
 と思わず花梨は自分の姿が映る鏡を見て小さく呟やいた。

「まっ花梨ちゃんったらそんな事言って!」
 と李は花梨の姿を鏡越しに見てニコニコと穏やかに笑っている。

 続いて出してくれた着物の柄とお揃いの巾着(きんちゃく)もなんともかわいらしかった。心憎い事に下駄の鼻緒までもが着物の柄とお揃いである。
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