サクラのエリコ
ピピッ、カチッ。


扉が開いたとたん、波のようにパソコンのキーボードを叩く音が押し寄せて来た。


カチカチカチ、カタカタ、カタタン

途切れる事なくキーボードを叩く音が響く。それに混じりスタッフの会話が早口で交わされている。


「ヨシカズ、5000入りました!」


「よし、一気にサクレ!今日中に最低あと一回は回させろ」


「ハルヒコ、チエに浮気してやがるぜ」


「じゃあチエとカズミで同時に揺さぶりかけちゃいなよ」


エリコにはまだこの会話の意味がさっぱりわからなかった。
カスミは理解しているようで、それを聞きながらあははと笑った。

後ほどカスミに訳してもらった内容はこうだ。


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「ヨシカズ、5000入りました!」

→ヨシカズという男性会員が、5000円でポイントを購入した。
(出会い系サイトは女性にメールするのにポイントを消費するらしい)



「よし、一気にサクレ!今日中に最低あと一回は回させろ」

→よし、メールのやり取りをして一気にポイントを消費させろ。今日中にもう一度ポイントを購入させろ。


「ハルヒコ、チエに浮気してやがるぜ」

→男性会員の中には色んな女性にメールを送っている人がいる。



「じゃあチエとカズミで同時に揺さぶりかけちゃいなよ」

→そういう男性会員は女性をゲットしようと必死なので同時に複数の女性から
メールが来ると舞い上がる。

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ああ、なんかキャバクラの裏側と同じだ、とエリコは直感で感じた。
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