サクラのエリコ
客はもちろん、職場のスタッフを懐柔する事も重要だとエリコは思っている。


二流のキャバ嬢はスタッフへの接し方がヘタだ。たかがボーイだから、とかたかが呼び込みだから、とか、客さえ掴めばOKだと思い込んでいいる女が多い。

しかしそれでは自分の力の限界が来た時に乗り越えられない。

いつどこで彼らの助けが大きなポイントになるか。

エリコはそこまで自然と計算できる能力が身についていた。

エリコがNo1キャバ嬢であったのは顔のかわいさだけではないのだ。


「おはよーございまーーーす」


ほぼ全員の男性スタッフが声を揃えた。


手ごたえあり。


まだ面接にすら受かっていないのだが。



「へぇー16歳でキャバクラのNo1にねぇ」


カスミから「シムラ社長」と紹介された男は、履歴書とエリコを交互に見ながら言った。


「で、未成年なのがバレて首になったと」


「えへへ」


少々正直に話過ぎたかな、とエリコは思った。
しかしカスミが、そこがエリコのセールスポイントだから必ず言えと勧めたのだ。


「はぁ、クリステンか。知ってる知ってる、結構有名店だよな。あそこでNo1にねぇ…」


社長は見た感じ、まだ40歳は行ってないだろう。陽に焼けた顔に茶髪といかにも胡散臭い。
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