サクラのエリコ
「入店してどれくらいでNo1になったの?」


確かにこの話題は珍しかろうが、面接なのに一切仕事の話しがないのはいかがなもんだろうか。


「3ヶ月くらいですかね〜」


「すげぇなオイ、それから一年近くずっと?」


「はい」


「パソコンは触れる?」


「はい、ブラインドタッチOKです」


たわいもない会話の中に、突然大事な話を挟む。よくある営業マンの話し方の一つで、相手の思考に隙を与えない方法だ。
エリコは勿論それに対処できる


「よし君採用」


「は?」


「カスミちゃんに聞いて、これる日からシフト組みな。二、三日研修扱いになるけどやってみて」


「は、はい」


こんないい加減な面接でいいのか。
胡散臭い業種にはやはりいい加減な採用基準しかないと言うことであろうか…



しかしエリコは直感で自分ならやっていけるかもしれないと感じた。

「ごめんエリコ。今日人手足りなくてさ、新人研修してる余裕ないの」


「あらそうなの?じゃあ今日はワタシこれで帰っていいのかな?」


「うん、終わったらシフト合わせで電話するから」


「おっけえ、できたら初日はチョッパと同じ日がいいなあ」


「もちろんよ、うまく調整してもらうから」


「ありがと〜ん」


と言う訳で、ものの15分程で面接・採用が決定し帰路につくエリコ。


このまま新宿をブラブラしたいところだが…昨日の今日だ、もうしばらく大人しく隠れていることにした。
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