サクラのエリコ
やりかけのゲームや読みかけの雑誌を家に置いたままなのが気にかかるが仕方がない。
しかし当面の下着の着替えだけでも買おうとユニクロに寄る事にした。


仮面ライダーの目くらいデカイサングラスで顔の半分を隠し、服の趣味はカスミからの借り物なので普段のエリコの雰囲気は充分に隠せているはずだった。
しかしまあ、エリコの身長は153cm、カスミは173cm。
横幅は同じくらいなのに丈が長い。
特にカスミは手足が長いモデル体系なので、ジーパンの裾を何回も折り曲げなければなたなかった。
何を食ったらこんなに育つんだろう。

「エリコ!」


ぎくっ

呼び止める女の声。
人間ピンチの時は一瞬で色々考える。聞えないふりをして歩き去るか、声の主をとりあえず確認するか。

幸いサングラスで目の動きは悟られる事はない。チラリと横目で声のした方向を見た。


真っ先に目に入ってきたのは、真っ黒な黒髪だった。女のエリコでも一瞬見とれてしまいそうな艶やかな髪。
若い女がこっちを見て微笑んでいた。
真っ白な肌がさらに髪の黒さを印象づけている。


「真奈美さん!」


「結構久しぶりじゃない」


真奈美を見るとエリコはいつもマネキンを思い出す。彼女はそれくらい完璧に整った容姿の女性だった。


これで芸能人でなく夜の新宿の女だというのだから世の中わからない。
< 16 / 63 >

この作品をシェア

pagetop