サクラのエリコ
「聞いたわ、やっちゃったらしいわね」


メインストリートから少し離れた喫茶店に入ったエリコと真奈美。
売れっ子の風俗嬢である彼女は、目立つ場所にいると客やらスカウトやらに声をかけられまくる。
だから真奈美は職業柄人の目から外れた店をよく知っていたし、エリコも彼女から幾つか教えられた事もある。

エリコと真奈美はひょんな事から知り合ったのだが、何かと縁があり今に至る。
真奈美は唯一エリコの気持ちがわかる人物だった。

彼女も未成年の頃から新宿に根を張っていたのである。


「とうとうバレましたか」


真奈美はタバコに火をつけながら言った。


「ごめんね、年ごまかしてるの黙ってて」


「いいわよ、知ってたから」


「私が16って知ってたの?」


「うん、まだ高校生くらいだろうな〜って思ってたよ」


「ええ〜!?いつから??」


「初めて会った時から。だからあんたに好感が持てたのよ」


「どうして?」


「私と同じだから」


そういって真奈美はアハハと笑った。上品な顔立ちがたちまち無邪気な少女の顔になる。


「そっか、真奈美さんはよくバレなかったよね」


「運がよかったのかしらね。おかげでどっぷりこの世界から抜けれなくなったけど」


「私がクビになったの誰に聞いたの?」


「仕事行くときにクリステンの前通ったら救急車来ててさ、何事かなって聞いたの」


「うはあ」


「智花、鼻折れたってさ」


「うはあぁ」


別段罪悪感もなにもないが、一応申し訳なさそうな顔だけはした。顔の広い真奈美は智花とも知り合いだし、マネージャーとも仲がいい。
< 17 / 63 >

この作品をシェア

pagetop