サクラのエリコ
後の事はよく覚えていない。

ガッシャンガラガラと智花がもんどりうって倒れ、うーうーとうめき声を上げていた。

自分のコブシをみて思わず


うをっ



っと叫びそうになるくらい血がついていた。


16にして結構な修羅場をくぐってきた経験からか、エリコは反射的に店を飛び出していた。


血を見たらとりあえずダッシュ。それ以上殴り続けるのは猿のやることだ、と昔付き合っていたチンピラに教わった。
あいつとは散々な思い出しかないけれど。


やっべー警察沙汰になるぞこりゃ!






ほんっと不条理だ。


悪を成敗した正義のヒロインが走って逃げることになろうとは。


こんな事はエリコの人生の中で初めての事ではないのだが…。


夕暮れのカブキ街の人の流れとは逆に、エリコは走り出した。

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