サクラのエリコ
エリコが不安でいっぱいになっている間に、車は港の倉庫地帯に入った。





港の倉庫。


結花が意外とバカなのは知っている。
こういうベタな場所を思いつくのが精一杯だったのだろう。
もしかしたらこんな刑事ドラマみたいなシュチュエーションを楽しみたかっただけかもしれない。
女ボス一人、チンピラ五人、後ろ手に縛られた少女一人。
ああ、あとこれで船越栄○郎がいたら完璧、サスペンスドラマの役者は揃う。
最後はガケか。


「やっとこの時が来たわねエリコ」


ようやく結花が口を開いた。おそらくエリコの顔を見て怒りが爆発しそうになるのを我慢していたのだろう。


「鼻どうしたの?花粉症?」


「…っこのガキ!」


ガッ



結花は怒り任せにエリコの鼻を目掛けてぶん殴った。



「いっ…」


うめき声を上げたのは結鼻の方だった。
エリコは瞬間顔を伏せ、パンチを額で受けた。額の骨は硬い、生半可に殴ると痛いのは拳のほうだ。

しかし結花の手にはめられていた指輪が、エリコの額を傷つけていた。
額から真っ赤な血がツーっと流れる。
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