サクラのエリコ
「鮫島のぱぱーーー!!」


キャアキャアと子供のように鮫島に抱きつくエリコ。


「こらこら、未成年が呑むんじゃないぞ」


「今日はありがとうね!」


「ああ」


「でもほんとごめんね、16歳だって黙ってて」


「それは知ってたからかまわんと言ったろう」


えへへ、と満面の笑みを浮かべるエリコ。鮫島は娘を見る父親のような顔でエリコの頭を撫でた。


「あたしさー父親って知らないから。もしいたら鮫島のぱぱみたいな人なのかなーって思うよ」


「ハッハッハ、…こんなヤクザな父親は持たんほうがいいぜ」


力なく笑った後、一瞬鮫島は沈黙したがすぐに笑顔に戻った。もし彼にも娘がいればエリコと同じか少し上くらいの年頃かもしれない。




「そんな事よりもよ、お友達にキッチリ礼をしときな。いざって時に命かけてくれる奴、大事にするんだぜ」


「うん!」


そう言ってエリコは鮫島の頬にキスをした。


「ハッハッハ、こりゃ最高の報酬だな」


「そう、一番のありがとうの時しかしないよ!」


そう言うとまた満面の笑みを浮かべる。口の端から覗いた八重歯が16歳らしい顔を見せた。
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