サクラのエリコ
「ちょっぱーーーーんんんちゅ」


彼女は席を立つや否や、隣の席のカスミの頬にもキスの雨を降らせた。




「ちょっとおばさんが相手でもいいかしら?」


空席になった鮫島の隣に、静かに真奈美が座る。


「ああ、大歓迎さ」


そう言ってタバコを取り出した鮫島に、真奈美がさっとライターで火をつける。


「まだ思い出すの?」


「ああ、ほんと情けないね」


「でもエリコはエリコよ」


「わかってらあよ、俺もそこまで女々しくねえ」


「だけどな?」


「だけど・・・」


先に真奈美に台詞をかぶせられ、鮫島は苦笑した。
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