サクラのエリコ
新宿駅西口のファーストフードでカスミと待ち合わせする事にしたエリコ。


空腹だったがコーラだけしか注文しなかった。


お金がなかったわけではない。


新宿の有名店でまがりなりにも一年間No1だったのだ、小さなマンションくらいなら買える貯金はある。

ブランド品など、仕事で使う最低限のものくらいしか興味がない。


「大量生産された女」


ブランド品で着飾るとそういう人種になってしまいそうで嫌いだった。


他にホストに狂うわけでもない、金のかかる趣味があるわけでもない。


貯金の残高が増えるのも当たり前だ。


それに空腹を我慢したのにはちょっとした期待があったからだった。



程なくしてカスミがやってきた。ちょっと走ったのか少し息が乱れている。


「ごっめ〜んエリコ!待った?」


全然待ってないのに走ってきてくれたなんてホントにいい子だ、
とエリコはカスミを抱きしめたい衝動に駆られた。

「あ〜んちょっぱ〜ん」

「はいはいエリコイイコエリコ」


カスミがエリコを慰める時のおきまりの台詞。


カスミはエリコより3つ年上なせいか、なんだか甘えたくなる魅力があった。




「も〜聞いてよ〜」


「と、その前にあんたこんなとこにいていいの?」

「あ」


「もう、取りあえずうちきな〜、しばらくかくまってやっから。飯食った?」

「まだー!!!」


待ってました、とばかりにエリコは満面の笑みで答えた。


空腹なのにコーラしか注文しなかったのはこれを期待していたからだ。
カスミは料理が非常に上手く、エリコは彼女の家にお呼ばれするのを非常に楽しみにしていた。
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