生と死
テレビでは、ニュースが流れている。


相変わらず無愛想なニュースキャスターは、きっちりネクタイを締め、淡々と事件の内容を伝えていた。


『先日、自分の父親を殺害した20歳の息子、堀江正志容疑者が、警察の取り調べで動機を述べました。堀江容疑者は、幼い頃から父親に虐待を受けており…』


そのニュースを聞き、トーイは呆れた様子でビールの缶を開けた。


「くだらねぇな。」

朱美は、呟いたトーイに耳は傾けるものの、目線はテレビのまま返答をした。


「なにが?」


トーイも、目線はテレビ画面のまま話を続ける。


「俺は、親を悪く言う奴が嫌なんだ。立派になるまで育ててくれてさ、俺達ガキの面倒見るのに必死で…。自分の事なんか構いもしない。今の俺からしたら、考えられねーよ。神業だよ。」




これは、人として当たり前の純粋な気持ちだ。誰にも否定出来ない、熱い想い。


子が親を想う。素晴らしいこと。




だけど…



子が親を嫌うのも、ある種『純粋な気持ち』でもあるのだ…


純粋な、心の悲痛。


これも、否定することは出来ない…



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