生と死
朱美は、思った。


殺された娘を。




彼女に、同情は沸かなかった。

だって、他人事に思えないから。

朱美は、20歳。

彼女は、33歳。



あの人にも、20歳の時があり、そのときはまさか自分が13年後に
こんな最後を遂げるとは、考えてもみなかったろう。

今の自分の様に。

きっと、母親と一緒にテレビでも見ながら、
きっと、そのときも同じように殺人のニュースが報道されてて、
「恐いよねぇ」そう、他人事を呟いていただろう。




それが、自分の身に起こったのだ。




つまり、今の自分も、同じように殺されたって可笑しく無いのだ。



明日かもしれない
1年後かもしれない
13年後かもしれない






殺された人だって、全てが他人事だったのに。




自分に降りかかった。





それは、全ての人間に言えることだと、警告された気分だ。




だから、朱美は他人事に思えなかった。


可哀想だなんて思えなかった。

< 8 / 58 >

この作品をシェア

pagetop