待っていたの
いつもの自堕落生活がどんなに幸せか、何もない日常がどんなに幸せか、この世界で感じている。

泣きそうなほど、帰りたい。

(やめて欲しい……)


そう思っていると、会議も終わったみたいで重臣達がこちらを見る。


白夜が最初に退室するのだろう……彩はすぐに膝からどいて頭を下げ白夜を見送ろうとしたが、白夜の指に彩の指が絡まり、連れられて部屋を出る。


いたたまれなかった。


(どうしたらいいのだろう、あんな伝承なんて嘘をつかせて)


伝承が何か分からない彩だが、層な嘘を重臣の前でつかせたという自覚はある。

日本の古事記や、日本書記の名を借りたとなれば一大事だ。

「なぜあんな嘘を…?」

高い位置にある白夜の顔を見上げ、歩きながらゆっくりとした口調で尋ねる。


少し震えた声で、それでもはっきりと。


「嘘ではない」

「嘘じゃない?」

「伝承は本当だ」

「え……?」

「お前は本物だ、気にする事はない」

つい昨日入った執務室まで付いてきてしまう、仕事の邪魔になるかと帰ろうとしたが、白夜が今日はたいした仕事はこないと、中に誘う。


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