待っていたの
王宮は息が詰まる。


ありえないもの、身分なんて、社会的地位はあっても何においても優先されるべき事ではなかったし。


「帰りたくない…」

王宮の方を見て、一言つぶやく。


「陛下に許可もらって泊まれば?陛下は心の広い方みたいだし、一泊くらい許してくれるって」

「手紙書けよ、姫さんから陛下には閲覧なしで一発で陛下の元に届くだろうし」

「うん、そうする」

少しだけ笑顔が戻った、彩を嬉しそうに眺めるふたり。


「陛下と喧嘩したから、戻りたくないなんて姫さんかわい所もあんじゃん」

「喧嘩…したんだ、彩?」

「喧嘩するほど仲良くないよ…私は道具だもん」

「道具って彩が?」

「うん、伝承に基づき繁栄をもたらす道具」

(手紙も書きたくない。道具は生きていればいいんだもの。どこで何してようと、関係ない)


「他の国なら、孕んでるか鎖に繋がれているか…だって」

「あ…分からなくもない、彩は龍国の大事な人になったから」



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