待っていたの
「そんなの望んでない、でもみんな期待の目で私を見てる」

(何もできないよ)


期待してるから、こんな小娘に頭を下げる。


陛下の第一妃になると宣言されたから、丁寧に対応してくれる。


誰も…疾と淑鵬以外は彩を見ていない。


彩は必要とされない。
そう思うとジワジワと溢れる涙。
こぼれて彩の手を濡らす。

「ヒック…ッ〜………フッ〜」

涙が止まらなくなってしまう。
疾も淑鵬も優しいのに、彩だけ不幸な訳じゃないのに。


ふたりも優しい人がいて、衣食住も確保できて、学校に通わせてもらって、好きに…自由にできるのに。


「ひ…姫さん?!」

オタオタと左に座る疾は慌てて、どうしようもない位慌てており焦っている。


「彩…?年上のくせに泣き虫だなぁ」

馬鹿にした口調で、キュッと抱きしめてくれた。
銀髪が肩に当たる、くすぐったい、淑鵬は弟を思い出す。
柔らかいものが首に触れたが、嬉しくて気にならなかった。

「大丈夫だって、大丈夫」

その根拠なんかない慰めが嬉しくて、また涙が出てくる。次から次に溢れてくる。



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