待っていたの
目を恐る恐る開けた彩の目に飛び込んできたもの、そこは御所風の家屋に、青色の壁にシンプルな調度品が並ぶ。


「遊女になるの私?」

何を彩の脳みそがはじき出したのか。
ここが廓だと思ったみたいだ。


「なんでだ…」

ため息と共に吐き出される、白夜の言葉。


「わ、わわたし、遊女なんて無理だよ!年齢も行き過ぎてるし!雑用なら……なんとか」

女同士の争い、権力闘争が起こる現代の日本の女の子が持つイメージだ。


(でもどうせニートだし、夢かもしれないし、働くのもいいかも、家族と離れて、自分の為に一歩踏み出せるかも)


生きる為に働く……。


目をつぶりもう一度開けた時には、オドオドした雰囲気を感じとれなくなっていた。


「いくぞ」

そういい先を促す白夜に、黙ってついて行く。


白夜を見るなり門番が丁寧に頭を下げる。

(もしかして、偉い人?)


中にはメイド、西洋風のドレスのようなスカート姿で、様々な髪色と眼の色が彩を注目している。
すれ違うと笑い声が聞こえるのも、感じのいいものではなかった。



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