待っていたの
どこか他人事の様に思う。

ねっとりと絡み付く舌、吐息と上気した頬。


怖い…怖い…コワイ


誰か助けて、嫌だ!


「お願い、助けて……疾っ…………淑鵬!」

ぴたりと白夜の動きが止まり顔を覗き込まれている。

パチンと指を鳴らせば、声が出せなくなる。

「        」

(嘘、いやだ…いやだ)

(やっぱりこれは夢…夢よ)

(お願いはやく醒めて…)


抵抗などできず、泣くのを我慢する事だけに、精一杯で白夜がどんな表情だったか、どんな事をしたか、すべて次の日の朝には忘れていた。


ただ事実は、自分が身体も白夜の妻になったという事だけ


自分を守るための防御本能だ。


白夜が隣で眠った後、身体を背けて、ひそやかに泣きこんな事なんでもないと譫言のように、言うしかできなかった。


そして自分の非力さを呪い、運命を呪った。


初めては…王子様にとか、結婚するまでとか思っていた訳ではないが…それなりに好きな人に優しくとは思っていた。



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