待っていたの
妻になる事が決定なら、少しでも他に興味を持ってもらいたい。
はっきりと意思を示す。

そしたらあの部屋には可愛らしい姫様が、住むことになり、忘れてくれる。


そうサラリと言ってしまえば、沸き立つ重臣達。


「私が子を孕めるかどうか分からないこの状況で…後継ぎが欲しいこの状況で他の姫を娶らないなどと……」


国の為にもよくないと言おうとする、その語尾に重なる声。
ザワザワと騒がしくなる室内。

「なんだ…そんな心配か?もう栄達が調べた、お前は受胎可能だ」

「はっ…?」

ついつい素の声を漏らす。私は生理不順だし、言い逃れができると思っていた、またひとつ退路を絶たれた彩の顔は引き攣る。

――魔法って便利ね。


「そういう事だよ、姫。心配してたんだよね…?陛下の子供ができなかったらどうしようって」

ホッと安心した室内。


「昨日のでもう妊娠してたりして…クスッ」

「…………。それは喜ばしい事、私もお勤めに励みましょう」


あくまでもお勤め。
義務、義理、お世話になる為の恩返し。



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