待っていたの
護衛を引き連れて、回廊を歩いていると先ほどのメイドが平伏している。


「あ、あのあたし……、庇って貰ってありがとうございました。」

床に額を擦り付ける。
16歳位の女の子。


「ご用がございましたら、何なりとお申しつけ下さい、姫様」

肩までの茶色の髪に、大きな目、可愛らしい雰囲気。

「ありがとう、立って。気にしなくていいの、あれはあっちがいけないわ」

あの男…奴隷なんて言ったんだから。


「あたしが転んでしまって…、陛下にもお礼を申し上げてください」

「ええ、わかった」

そう返事をしたら、嬉しそうに微笑んだ。


自室に帰る道で、護衛にたずねる。


「あの子の名前は…?」

「万 翠翠 です、最近王宮に仕えるようになりました」

―…ばん すいすい

「わたくしの側近くに、仕えるのは無理?」

「いいえ、陛下の許可がありましたら可能でございます」

護衛の三人はただ職務を真っ当しているだけで、息が詰まる。



.
< 70 / 243 >

この作品をシェア

pagetop