待っていたの
「法宮 彩 という名らしい、どう思う?」

その白夜の言葉に、姿勢を正す彩。

「ホンモノじゃな?」

先進がしわ枯れた声で答える。
栄達はひとつ頷く、その三人の神妙な面持ちとは関係なく、彩はうっとりとしていた。
22年の人生で彩は初めて思い知った、自分が面食いなんじゃないかと。


「とりあえず、着替えは用意してますよ陛下」

………………?

(陛下?天皇様…?日本には王様はいないし。でもこんなロン毛じゃないはず。というか違う。顔が……いや、年ですら。夢か……だったらイケメンゲットしたい!)



「フォッフォッフォ、夢ではないですよ、姫君」

笑う曹老人の声に、反応したが彩もとりあえず愛想笑いを返しておく。


はっきりと夢ではないと言われたが、そんなに簡単に認めたくはなかった。


人間、希望は簡単に消えない。


というか、口に出していたらしい。


「イケメンゲットですか?」

栄達に言われてしまい彩は口を慌てて、手で押さえるが遅い。

「失礼いたしました」

顔から火が出そうになるとは今の彩の状態を表すのであろう。


「夢ではありませんよ、ここは龍国」

―りゅうこく

白夜が言っていたと密かに思う。


「龍国……」

だんだん、ハッタリも強がりも消えていく。



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