待っていたの
「楽しく話しながら、食事をしたいですから、今日の出来事話して下さい」

笑いながら、そう話せば我先にと話し始める。


その中には大切な情報も混じっている。
――不満も…。


その訴えをひとつひとつ聞けば、食事は終わる。


中にはおかしな話しをして彩を笑わせる人もいた。


手を振り別れる、彩を呆然と夢を見ているかの様に見送る。


自分達の労働で綺麗ではない指をとって握手してくれた、雲の上の存在。


彩の頭に埃が一杯付いてようと、薄汚れていようと構わなかった。


それにより損なわれる美貌ではない。


なぜか彩の手も荒れていた事に安心したようだった。


深呼吸して寝室のドアを開ける。


「ただいま戻りました」


「やっと帰ってきたの?姫…」

栄達がいる。
栄達も陛下の私室に立ち入る事の出来る、数少ない人だ。


「遅くなりました」

まだ陛下は正装のままで酒盛りをしている。


無言で近寄り震える身体をごまかして正装を脱がす。


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