待っていたの
それに、彩が逃げだしたら申し訳がたたない。


(メイドさん達よりもいい着物着せてもらってるのに…責任を果たさないなんて)

こんな宝石も彩はつけられるような、働きもしてなくて。


部屋から外に出て光を浴びる、眩しくて目を細める。

前にも後ろにも多分高官達の娘や孫達。


「よろしくお願いします」


この人達は陛下の側室になりえる方達だ。


値踏みされたりするのだろう、行列に加わる事で陛下に見初められるかもという事か。


彩はこんなに殺気の篭った視線を向けられ、替われるもんなら変わって欲しいと嘆息する。


先には陛下が居るのだろう、前の人達が次々左右に避けて、頭を下げていく。


重みでバランスが取れずフラフラする、頭を必死に真っ直ぐ保つことに精一杯で横の娘が、わざと連なって下げているアレキサンドライトを引っ張った事など知らなかった。


「あ……」

視界の端に、バラバラになった、宝石がうつる。



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