七狐幻想奇譚
変わらない日常



「……暑い」



扇風機から羽根を回転させる無機質な音だけが部屋に響く。


ーー眠れない。


扇風機は古いからか、音が最近やけにうるさい。それも一理あるが、夏独特の暑さがおそらく一番の原因だろう。



少女はベッドから抜け出し、窓を開ける。



窓の外は民家と田園風景が淡々と広がっているだけで、何もない。少し生ぬるい風が頬を撫でていく。



「明日からお祭りかあ」



狐火の町が唯一賑やかになる日。伝統の夏祭りが七日間行われ、余所からも人がたくさん来る。


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