七狐幻想奇譚
でも聞かなければ……。


うまく動かない唇を必死に動かし、なんとか言葉にする。



「……どど、どう……して、あ、なた……が……?」

「季陶文香(きとうあやか)。わたしの祖母も、母も、みんな巫女だから」

「巫女さん……そっか、そうなんだ」



巫女と聞いた瞬間、ほんの少しだけほっとする。



少女は不思議そうに首を傾げた。



「どうしたの?」

「ううん、ちょっとびっくりしただけ。あの、季陶さん……ここでいつもバイトしてるの?」

「いつもじゃないわ。週二日だけ。たまに頼まれて入る時もあるけど」

「季陶さんはお祭りどうするの……?」

「裏方でお仕事ね」

「た、大変だね」

「巫女にもいろいろあるから。それよりあなた、何か買いにきたのでしょう?」

「あ!そうだ、ちょっとごめんね」



さすがに、客が店内にいなくても待たせるのは申し訳ない。パン売り場から適当に選んだあんぱんと牛乳の紙パックを持って、レジに戻る。



「好きなの?」

「うーん、なんとなく選んだだけ」



そうこうしているうちに会計も終わったが、なぜかまだレジの前から立ち去らない。



「買い忘れ?」

「あ、あのね、」

「?」

「友達に、なってくれないかな……!」



初めて自分から、行動した気がする。桃花はドキドキしながら少女の返答を待つ。


告白の返事を待つ人の心境が、わかったような気がする。告白された経験もないから、本当に気がするだけだが。


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