七狐幻想奇譚
表情に変化はなく、ほぼ無表情に近い。元々喜怒哀楽を表すのが苦手なのかもしれない。


少女は数分の沈黙のあと――。



「あなたがいいなら、わたしは構わないけど。でも友達になりたいって人、はじめてだわ」

「そ、そうなの?」

「何考えてるかわからないから怖い」

「え」

「そう言う人は近づいてこないから楽なの。あなたは違うようだけど」

「ごめんね……」



思わず謝ってしまった。もしかして迷惑だったかもしれない。こんな風に突然友達になって、だなんて。顔が恥ずかしさで、トマトのように赤くなる。



少女はゆっくり首を振る。



「嫌じゃないわ。今夜狐火神社で、会いましょう」



帰り際嬉しそうに何度も手を振る桃花に、少女も同じように振り返した。その直後、何もない空間から小さな狐が現れ――どこか物悲しそうな表情を浮かべて、こちらをじっと見つめている。



それでも、真実を歪めることはできない、巫女としては。




「彼らの関係に、わたしも介入する事はできないの。あなたと同じように」




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