七狐幻想奇譚
この人は一体何を知っているのだろう――。



桃花のそんな思考を読んだかのように、さりげなくコンビニの袋を拾い、にこっと笑う。



「私は芦屋真琴。正真正銘の女だよ。でもこの通り外見、思考、性格も男に近い。最後に一つ」



さっきまでのゆるい雰囲気とガラリと変わり、急に真面目な顔つきになった。



「彼の事を覚えていなくても、決して彼は君を責めない。――ねぇ、一体何を君は忘れてしまったんだろうね?」






それはまるで――呪いのように、耳に残る言葉だった…………。





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