七狐幻想奇譚

因縁

あれから家に帰ってそのまま倒れ込むように、自分の部屋のベッドにダイブする。


何も考えたくない。




何も食べる気がせず、コンビニで買った物は冷蔵庫に無造作にしまった。



“彼の事を覚えていなくても、決して彼は君を責めない。――ねぇ、一体何を君は忘れてしまったんだろうね?”



忘れられない芦屋の言葉。



「……彼って誰の事だろう」




まるで記憶に靄(もや)がかかったように、何も思い出せない。そのまま微睡み、深く深く記憶の海に沈んでいく。


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