七狐幻想奇譚
眠れない。


夜という永遠とも思える長い時間は苦痛だった。特に眠れないともなると、余計重く感じてしまう。



それもあって、最近暇潰しに始めたチャットが案外面白かった。友達と呼べる子もいない。スマホに登録されてる連絡先は家族のものだけ。



誰かと雑談したりするのは新鮮で、暇さえあれば入り浸っている。お互い顔を見ないからこそ、話せることもたくさんあるのだ。



その日もチャットをしながら一晩明かした。



それでも六時半頃には目が覚め、身支度を整える。臙脂の制服に袖を通し、最後に淡い栗色の髪をとかして部屋を出る。髪はセミロングで、化粧の類いは一切しない。






それが、望月桃花(もちづきももか)だった。






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