七狐幻想奇譚
台所へ行くと、既に母と弟が朝食を食べている。年期の入ったテーブルにはロールパンに、何故か味噌汁といったアンバランスなものが並んでいる。


弟の静輝(しずき)がこちらを見ることもせず話しかけてきた。一応、家族だから気を遣ってのことだろう。



「いつもより遅いね」

「……そんなことないよ」

「そう」

「あら。静輝もういいの?」

「僕はもういいよ。そろそろ友達が迎えに来るし」



静輝と入れ替わるように桃花が着席し、相変わらず味のしない冷めた味噌汁をすする。母が思い出したように言った。



「明日のお祭り楽しみねぇ。静輝は出店の手伝いをするらしいけど、桃花はどうせ何もないんでしょ? どうしてこんなにもちがうのかしら」

「……ごちそうさま」



母の問いかけには答えず席を立つ。洗面所で歯を磨いてから、最後に髪型をチェックしてから家を出た。



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