七狐幻想奇譚
建ち並ぶ民家と田園を抜ければ、幻想の森が広がっていて、その森を抜けた先に、石段が三十段続く狐火神社があった。



上の方では祭りの準備をしている大人たちが、慌ただしく動き回っている。



その中心にいた赤髪の青年が桃花に気づき、手を振ってくれる。この町で浮いている自分に、普通に接してくれるいい人だ。




いつもタンクトップに、町内のタオルを首に巻いている。一度寒くないかと聞いたら、自分の出身地は季節問わず寒いけど、ずっとこの格好だぞと笑い飛ばされてしまった。



「よう。静輝ならもう手伝ってるぜ」

「お祭りの実行委員だから」

「桃花は?」

「……私なんていなくても、誰も困らないもの」



そう。



いつだって、必要とされるのは弟の静輝の方だった。



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