ブルービースト
「あー、今日があの日か」
リシアが去っていった扉の方向を見ながら、レイツがどことなく呟いた。
シエラやクリスもそちらを見る中、ブロードはまたスルメを頬張りついでにポチにも少しわける。
「……あの」
「ん、どうした?ユノちゃん」
珍しく遠慮がちに手を挙げる彼女を見て、レイツがきょとんとして上司の補佐に目を映した。
ユノは少し後ろめたさを感じながらも好奇心には勝てずに訊く。
「…リシアちゃんはどこに行ったんですか?それに、あの日って…??」
その質問に、皆は顔を見合わせた。
…ブロードとポチを除いて。
彼はポチを抱いてスルメをくわえながら、眠りにつこうとしていた。
…起きたばかりの筈なのだが。
「…まぁ、一人だけ知らないのも可哀想だしなぁ」
昼寝ではなく二度寝でもない朝寝をする上司を無視し、レイツは呟いた。
シエラとクリスもうんうん頷き、そして少女が口を開く。
「…今日は、リシアさんの元カレの命日なんです」