ブルービースト

みんなの視線がブロードに集中していた。


それでも隊長は起きない。



…微動だにしない。






「…お兄ちゃん?」



不意にレイツが立ち上がった。


ズカズカと上司に歩み寄り、その顔を覗き込む。



体調でも悪いのか、と額に手を伸ばしてみる。



――…しかしそれは途中で失敗してしまった。




「…わん!」


「うわっ」



いきなりブロードの腕の中から飛び出しレイツに飛び付いたポチ。


彼は尻尾をピンと伸ばし、勢いでレイツを押し倒すとまたブロードのもとに戻った。



それから飼い主の頬にすりより、ペロリと舐める。



しかしやっぱり起きない。


…ので、懲りずに頑張る。




「……ん…ぅ」


「!」


「くすぐった…い、ポチ…?」



みんなが唖然として小さな犬の行動を見守る中、やっとブロードは目を覚ました。


ぼんやりとしながらもポチを捕まえ、自分の左側に抱き上げる。




「キュン」


「……? あぁ、俺寝ちゃったのか…」


「くぅん」


「…部屋に戻ろうって? ……うん」




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