ブルービースト
ブロードが再びフロアリビングに現れた時には、もうお昼の時間を過ぎていた。
何故か私服を着てかばんをひっさげ、すっかりお出かけモードだ。
「ちょっと、どこ行くつもりですか」
お昼を食べて食堂から出たユノが刺々しい声色で訊くと、ブロードはへらりと笑った。
「ちょっと、ね。夕飯には戻ってくるよ」
「わんっ」
かばんから顔を出すポチ。
まさかそんなところにいるとは思っていなかったユノは大いに驚いた。
「ポチを連れていくんですか!?犬が入っていいところなんでしょうね?」
「いや、駄目だよ。着いたら外で待っててもらって、そのまま散歩しようと思って」
「…それはいいですけど、仕事は?」
「え?聞こえな~い」
いつもの決まり文句“仕事”を出した補佐にそう言い、ブロードはささっとリビングを去った。
後ろから怒鳴り声が聞こえたが気にしない。
「早くしないと間に合わないからね、なぁポチ」
「きゅん…」
「そんな声すんなって。大丈夫、間に合うよ」
柔らかく微笑んで顔だけ出したポチの頭を撫で、ブロードは小さく囁いた。
それからどこに行くのやら、ランさんに貰っておいたバナナがあるか確認してから少し緊張した面持ちで歩き出す。