ブルービースト
-Ⅲ-
「…遅い」
――…ででんっ!
と、効果音がつきそうな雰囲気でフロアリビングのソファーに座るのは、お馴染みユノ=リー中将補佐。
腕を組み顔をしかめるそれは、さながら結婚の挨拶を彼氏としに来る娘を待つ頑固親父だ。
「遅い遅い遅い遅い…」
ユノは苛立っていた。
何てったって娘が、否中将が何時間も出掛けたまま戻って来ないのだから。
不機嫌度MAXなユノにビビった他の隊員たちは、大人しくブロードの執務室でポーカーをしていた。
…何故にポーカー。
そして彼らはいつ仕事をするのか。
それは第一部隊の七不思議の一つだったり。
「そんな七不思議いりません。全く…あんの女男…。帰って来たら容赦しないんだから」
懐から銃を出して磨き出したユノに、食堂から覗いていたランおばさんは大いに恐縮した。
恐ろしい。
ブロードどんまい。
そしてそんなピリピリした空気の中、超タイミング悪く帰ってきた者がいた。
「たっだいま~ん」
「死ねこのクソ男がぁあ!」
「っきゃあああああああ!?」